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   日中笹川医学研究者制度は、日本財団の助成を受け、中華人民共和国衛生部、(財)笹川記念保健協力財団及び(財)日中医学協会の三者が共同で実施している奨学金制度である。本制度は日中両国人民の医学分野における協力関係を促進する事を目的とし、1986年に発足し、毎年中国から医学、歯学、薬学、看護等保健医療分野の従事者を招請し日本の医療・研究機関で研修行っている。
 実施以来、中国全土から1800余名の研究者を招請し、日本全国の200カ所以上の大学、病院、研究機関等に受け入れていただいている。帰国後の研究者は中国医学・医療分野において重要な力となっており、多くの指導者・上級管理者が輩出し、学術論文も数多く発表されている。
 今年(2007年)制度20周年を記念して発行された『日中笹川医学奨学金制度20周年誌』によると、日本で習得した臨床診断・治療あるいは看護技術の実践・応用率は54.5%にものぼり、さらに、帰国後博士課程指導教官となった研究者は16.4%で、修士課程指導教官となった研究者は31.9%という実績も示されている。また、同誌は、笹川医学奨学金研究者による海外SCI収録定期刊行物での論文発表は研修期間中1人当たり平均0.71篇で、帰国後1人当たり0.84篇と、学術的な成果を納めていることを記している。
 この制度の実行団体として、日中医学協会は20年間本制度の運営を担当している。具体的には、奨学金受給者の選考、語学研修講師の派遣、指導責任者及び研究機関への受入依頼、査証取得、宿舎の手配などの受入準備作業から、日本滞在期間中の奨学金支給や研究生活相談等までの各方面にいたるサポートであり、また、帰国生同窓会の活動へのフォローも含まれているすべての実務である。
 我々は本制度が引き続き、中国の医学・医療分野の人材を育成する事業として更なる発展を目指していきたい。
 


 
氏 名 研究期間 研究機関 現 在
孫貴範 1987年〜1988年
(第1期生)
筑波大学
社会医学系疫学
中国医科大学公共衛生学院院長、国際フッ素学会副主席
韓景献 1987年〜1988年
(第1期生)
北里大学
医学部 内科学
天津中医薬大学第一附属病院院長
燕純伯 1987年〜1988年
(第2期生)
藤田保健衛生大学
医学部
四川省成都市第三人民医院院長
臧偉進 1988年〜1989年
(第4期生)
京都大学
医学部生理学
西安交通大学生理学・薬理学特聘教授、薬理学教室主任、実験・臨床薬理研究所副所長
周新華 1988年〜1989年
(第5期生)
杏林大学
医学部解剖学
武漢大学医学院副院長、中国解剖学会理事
姚文慶 1989年〜1990年
(第6期生)
東北大学
医学部 公衆衛生学
遼寧省腫瘤医院副院長、遼寧省腫瘤研究所副所長、中華医学会科学普及委員会常任委員
李南方 1989年〜1990年
(第7期生)
三重大学
医学部 救急部
新疆維吾爾自治区人民医院副院長
魏于全 1990年〜1991年
(第8期生)
京都大学
放射線生物研究センター
中国科学院院士、四川大学副学長、中国教育部(日本文部科学省に当たる)「長江学者奨励計画」特別任命教授、人類疾病生物治療教育部重点実験室主任
宋柏林 1990年〜1991年
(第9期生)
東京医科歯科大学
医学部 内科学
長春中医薬大学第一付属医院院長
趙 群 1991年〜1992年
(第10期)
旭川医科大学
整形外科学
中国医科大学学長、中華医学会理事
王喜軍 1991年〜1992年
(第10期)
北海道薬科大学
薬学部 生薬学
黒竜江中医薬大学副学長、中国国家973プロジェクト課題グループ長、≪中国中薬雑誌≫、≪中国実験方剤学雑誌≫、≪中医薬現代化雑誌≫、≪中薬新薬与臨床薬理≫、≪現代中薬研究与実践≫等雑誌の編集委員を兼任
趙衛国 1991年〜1992年
(第12期)
東京女子医科大学
附属脳神経センター
上海交通大学付属瑞金医院神経外科主任教授
張 錦 1992年〜1993年
(第13期)
京都大学
胸部疾患研究所
寧夏医学院付属病院内科主任医師、教授、付属医院副院長、中華呼吸医学会委員、海外呼吸医学雑誌編集委員
宗瑞傑 1994年〜1995年
(第16期)
昭和大学
医学部 腎臓内科
山東省青島市中心医院副院長
景 涛 1994年〜1995年
(第17期)
山形大学
医学部免疫学・寄生虫学
蘭州大学副学長、基礎医学院院長
 
   日中笹川医学研究者制度は財団法人日中医学協会設立後の第1回常任理事会において、かねて懸案事項であった、中国における医療分野の人材養成事業のために、日本船舶振興会(現日本財団)に助成申請することを決めたことから始まる。当時、協会は10名程度の招請を想定していたが、日本船舶振興会笹川良一会長(当時)、笹川陽平理事(現会長)の英断により、中国の医療従事者を1年間に100名、10年間に1,000名招請するという構想ができ上がった。必要経費については、笹川記念保健協力財団(石館守三理事長)が日本船舶振興会の助成事業として責任を持つことになり、本協会は受け入れの計画・実施ならびに事業の管理を全面的に担うこととなった。
 1986年8月14日、中国衛生部、笹川記念保健協力財団、日中医学協会の三者は「笹川医学奨学金に関する協定書」に調印し、日中医学交流史に名を刻む奨学金制度が発足した。これにより、1987年10月、第1期生49名が来日し、日本全国35ヵ所の医療・研究機関において研修が開始された。
出月康夫 日中医学協会常任理事「研究助成 日本笹川医学研究者制度」−『日中医学協会 事業20周年』


 4月になって桜が満開になる頃に日中笹川医学研究者制度の研究者歓迎式典が毎年開催される私はいつもこの式典に参加するのが楽しみである。日本に到着したばかりの留学生は自分の名が呼ばれるとすくっと立つ。受入側の大学の先生の名が呼ばれ立ち上がり、初めてお互い顔を合わせるこの式典は感動的である。
 これまで私が受け入れた留学生は、広西省チワン族自治区広西中医学院の黄麗輝先生、黒竜江省医院の李健明先生、古林省延辺大学の金玉蓮先生である。留学生の教育と研究を通じて彼等も私も大きく発展する機会が得られ、いくら感謝しても感謝しきれない。
加我君孝 日中医学協会常任理事「牡丹の中国、桜の日本」−『日中医学協会 事業20周年』


 本制度の下これまでの20年間で、約1,800名の中国人研究者が日本での勉学を経験され、現在は、それぞれが日中両国を繋ぐ医学・医療界の指導者として活躍しておられます。たとえば、2006年中国国家科学技術進歩賞受賞者リストには3人のお名前が見られ、昨年開催された「2006年日中医学交流会議メタボリックシンドロームー日中における現状と取り組み−」ではその演者の一人が第25期生であり、また本協会機関誌「日中医学」VOL.21 N0.6の特集記事執筆者も6名中4名が「卒業生」でした。さらに、かつての指導者・研究者の間柄がその後も絶えることなく続き、愛弟子が本制度を使って再び来日、師とともに実り多い共同研究を継続しておられる例もあります。このように、本制度の恩恵を受けた研究者たちは、その成果としてその後、日本で得た技術や知識を生かしながら中国の発展に貢献するだけでなく、日本との交流の架け橋としても大きな力になって下さっているのです。
森 亘 日中医学協会会長「出会い」−『日中医学協会 NewsLetter No.12』
 


   2007年8月26日、これまで20年間にわたって行われてきた日中笹川医学奨学金制度にかわり、新しい奨学金制度として「日中笹川医学奨学金制度」協定書に、日本財団と中華人民共和国衛生部が調印しました。
 新制度では、将来中国の医学界の指導者となりうる人材の育成を主な目的とし、両国の医学分野の交流の促進と両国国民の健康と福祉の向上、相互理解の増進をはかることを目的としています。
 日中医学協会は、現行制度同様研究者の選考、来日後の手配等研究者にかかわる全ての事項を担当します。
 日中医学協会は、これまで日中笹川医学奨学金制度20年間に培ってきたノウハウを最大限に生かし、笹川記念保健協力財団・衛生部国際交流与合作中心と共に制度の運営を担当してまいります。
 なお、新制度第1期生は、2008年9月に来日予定で、募集など詳細につきましては、今後協会ホームページ等で紹介してまいります。
 

 




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