笹川同学会西北地区支部学術交流会が開催されました
2026/07/15

7月4日(土)、笹川医学奨学金進修生同学会(笹川同学会)の西北地区支部学術交流会が、寧夏回族自治区銀川市の富力万達嘉年華ホテルにおいて開催され、山西省、陝西省、甘粛省、青海省、寧夏回族自治区、新疆ウイグル自治区在住の笹川医学奨学金制度研究者OB等60名が参加しました。
学術交流会は、李国棟理事(第16期研究者)の司会のもと、「慢性疾患との共生」をテーマに、招待講演2題と笹川同学会会員による講演3題が行われ、高血圧、骨粗鬆症、慢性疾患管理、バイオマーカー、慢性皮膚疾患の自己管理など、幅広い分野における最新の研究成果が紹介されました。また、「予防医療」と「多職種連携」の重要性を共通のキーワードとして、それぞれの専門分野から実践的な取り組みが報告されました。
■講演者
魏述軍 寧夏回族自治区人民医院副院長、心血管センター主任
「質の高い高血圧管理」
高血圧診断の三つの基本的手法である「診察室血圧測定」「24時間自由行動下血圧測定(ABPM)」「家庭血圧測定」について体系的に解説されました。特に、白衣高血圧や仮面高血圧の判別、血圧の日内変動の評価、個別化治療の決定には、ABPMと家庭血圧測定が不可欠であることを強調されました。また、高血圧は重症度や病期、病型を総合的に評価するとともに、副腎疾患や腎疾患などの二次性高血圧の鑑別や標的臓器障害の評価を行うことが、精密の高い管理につながることが紹介されました。さらに、診察室血圧測定の標準化、自動血圧測定の普及、家庭血圧測定における「3-3-7」方式の実践の重要性についても説明されました。

趙愛玲 山西医科大学第一医院整形外科副主任看護師
「静かなる流行病―骨粗鬆症の診療・予防一体型システムの構築」
骨粗鬆症が「有病率は高い一方で、認知率・診断率・治療率はいずれも低い」という「一高三低」の深刻な現状について説明されました。また、「治療偏重・予防軽視」「医療サービスの断片化」「継続的リハビリテーションの不足」という従来の医療体制が抱える課題を示され、「予防-スクリーニング-診断-治療-リハビリテーション」を一体化した包括的管理モデルへの転換が提唱しました。都江堰市における地域全体での取り組みや、積水潭医院のERAS(術後回復強化プログラム)、上海市における専門医と総合診療の連携などの実践例も紹介され、看護チームがスクリーニングやFLS(骨折リエゾンサービス)、健康教育において重要な役割を担うことが強調されました。最後に、骨の健康管理を公衆衛生システムに組み込み、「未病を治す」という理念の実現に向けた提言がなされました。

劉麗娟 寧夏医科大学総合病院皮膚科副主任看護師(第37期生)
「慢性疾患とともに歩み、より良い未来へ」
慢性疾患の定義や分類、中国における疾病不可の現状(全死亡の88.5%を占める)ついて説明されました。また、不健康な食生活や運動不足などの生活習慣に加え、社会環境の変化も慢性疾患の増加に大きく関与していることが示され、「予防を重視することが最も経済的かつ効果的な戦略である」との考えのもと、栄養バランスの取れた食事や規則正しい生活習慣など、ライフスタイル改善の重要性を強調されました、栄養医学の視点から、「栄養は第一選択の治療である」などが紹介され、食生活の改善と個別化栄養管理によって人体本来の自己治癒力を引き出し、慢性疾患を根本から予防・管理していくことの重要性が示されました。

李 卓 西安医学院第一附属医院臨床検査科主任(第39期、46期生)
「『既病の治療』から『未病の治療』へ―新たなバイオマーカーによる慢性疾患の早期予測」
慢性疾患対策を「発症後の治療」から「未病段階での予防」へ転換する必要性と、その実現に向けた取り組みについて解説されました。アルツハイマー病の早期診断に用いられる血液中p-Tau217や、糖尿病性腎症を微量アルブミン尿よりも早期に予測できる尿中L-FABPなどを、新たなバイオマーカーは早期発見・早期介入の有力なツールになることが紹介されました。また、臨床検査部門が単なるデータ提供者から臨床支援を担う役割へと発展していることを事例と挙げて示すとともに、AIを活用した解析診断やマルチオミクス解析の導入によって、個別化された慢性疾患管理の実現への期待を述べました。

李 莉 山西医科大学第一医院看護部 主任看護師(第44期、47期生)
「多面的アプローチによる慢性皮膚疾患の健康教育と自己管理に関する多施設共同研究」
乾癬とアトピー性皮膚炎(AD)を対象とした健康教育および自己管理に関する研究成果が紹介されました。乾癬については、世界的に患者数が多く、特に肥満では発症リスクが2~4倍に高まることが示され、中国における食事管理ガイドラインの課題を踏まえ、HAPA(健康行動実践アプローチ)理論とナッジ理論を取り入れた、過体重・肥満患者向けの食事管理プログラムが提案されました。アトピー性皮膚炎については、喘息と共通する2型炎症による「アトピー三徴」の関連性を説明されるとともに、ナレッジグラフ技術を活用して診療ガイドラインや文献情報を統合した、患者が理解しやすい自己管理支援システムの構築について紹介されました。

今回の学術交流会では、高血圧、骨粗鬆症、慢性疾患、慢性皮膚疾患という異なる分野に共通するキーワードとして、「予防」「早期発見」「自己管理」「多職種連携」が繰り返し強調されました。各講演を通じて、「治療中心の医療」から「未病の段階で介入する予防医療」へと転換し、一人ひとりの患者に応じた継続的かつ個別化された健康管理を実践していくことの重要性を改めて認識する機会となりました。
