笹川同学会華北・華中・山東地区支部学術交流会が開催されました
2026/07/23

笹川医学奨学金進修生同学会(笹川同学会)の華北・華中・山東地区支部学術交流会が、7月11日(土)に河北省邯鄲市の華邑ホテルにおいて開催され、北京市、天津市、河北省、山東省等在住の笹川医学奨学金制度研究者OB 66名が参加しました。
学術交流会は、韓晶岩理事(第9期研究者)の司会のもと、「ライフコースを通じた健康管理」をテーマに、5名の笹川同学会会員が講演を行いました。
■講演
李顕筑 黒龍江省中医薬科学院教授(第8期研究者)
「中医学における全人的視点―人体マイクロバイオームと健康」
中医学の「三焦」理論と人体マイクロバイオームとの関連について解説しました。三焦が全身の気・代謝・解毒機能を統括するという中医学の考え方を紹介するとともに、腸内細菌叢をはじめとするマイクロバイオームを人体と共生する存在として捉え、有益菌を「正気」、有害菌を「邪気」に対応させて説明しました。また、健康維持には腸内環境のバランスを保ち、気の巡りや解毒機能を整えることが重要であり、それが健康寿命の延伸や老化予防につながるとの見解を示しました。
曹学成 中国人民解放軍第960医院教授(第18期研究者)
「高齢者脆弱性骨折の新たな視点と対策」
高齢者の脆弱性骨折は単なる整形外科的外傷ではなく、全身の加齢に伴う症候群として捉えるべきであると指摘し、手術のみを重視し原因への対応や転倒予防が軽視されがちな現状を課題として挙げました。その対策として、ハイリスク者の早期スクリーニングとカルシウム・ビタミンD補充、運動療法を行う一次予防、低侵襲手術と骨粗鬆症治療を組み合わせた二次予防、さらに長期リハビリテーションによる再骨折予防を目指す三次予防からなる包括的な予防体制の重要性を強調しました。また、骨・筋肉・転倒対策を一体的に管理する多職種連携によって、死亡率の低下と自立した生活の維持につながると述べました。
康熙雄 北京天壇医院臨床検査診断センター教授(第20期研究者)
「ライフコースを通じた健康評価システムの構築」
「ライフコース全体を対象とした健康評価システム」は、出生から成長、壮年期、高齢期に至るまで、生涯を通じた健康管理を実現するものであり、「健康中国2030」戦略にも合致するものであると説明しました。また、健康評価技術は集団レベルの評価モデルからAIを活用した高度な知能型システムへと進化し、将来的には一人ひとりの「デジタルヘルス・ツイン」の構築によって、現実とデジタル空間を連携させた健康リスクの予測や精密な健康介入を可能になると紹介しました。さらに、マルチオミクス解析とエクスポソーム研究を融合することで、医療を「病気の治療」から「積極的な健康管理」へ転換し、すべての人々の生活の質(QOL)の向上につなげていく方向性を示しました。
田素斎 河北医科大学第二医院教授(第22期研究者)
「介護人材育成における先端技術活用の重要性」
中国が「豊かになる前に高齢化が進む」という課題に直面する中、AIロボットやミリ波レーダーなどの先端技術が介護サービスのあり方を大きく変えつつあると述べました。また、「介護サービス専門職」が新たな職業として位置付けられ、第15次五カ年計画の終了時までに資格保有率80%を目指していることを紹介しました。人材育成では、従来の受動的な介護から、高齢者が主体的に生活を楽しめる支援への転換が求められており、デジタル技術と人材育成を相互に発展させることで、人材不足の解消と介護サービスの質の向上を図り、知識集約型の介護への転換を推進する重要性を強調しました。
孟召偉 天津医科大学総医院教授(第30期、40期、45期研究者)
「甲状腺機能亢進症に対する核医学診断・治療」
放射性ヨウ素(¹³¹I)治療は甲状腺機能亢進症に対する三大治療法の一つであり、安全性が高く、治癒率が高い一方で再発率が低いという特徴を有することを説明しました。また、治療前にはヨウ素摂取率、有効半減期、甲状腺重量などを測定し、患者ごとに最適な投与量を決定することが重要であると述べました。さらに、薬剤アレルギーや薬物療法の効果が不十分な症例、手術適応外の症例などが適応となる一方、妊娠中は禁忌であることを説明しました。治療後には甲状腺機能低下症が生じることは少なくないものの、これは予測可能な医学的経過であり、長期的な経過観察が重要であると述べました。
今回の学術交流会では、中医学、骨粗鬆症、高齢者医療、健康管理、介護、核医学など幅広い分野について、最新の研究成果や実践経験が紹介されました。講演テーマはそれぞれ異なるものの、各講演者はいずれも、疾病の治療だけでなく、予防医学の推進、健康寿命の延伸、そしてQOLの向上の重要性を共通して強調しました。また、AIやデジタル技術、マルチオミクスなどの最先端技術の医療・介護分野への応用についても紹介され、参加者は今後の医療と高齢者ケアの発展の方向性について理解を深め、多くの示唆を得る重要な機会となりました。





