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日中医学協会ブログ

笹川同学会東北地区支部学術交流会が開催されました

2026/10/02

笹川同学会東北地区支部学術交流会が開催されました

 笹川医学奨学金進修生同学会(笹川同学会)の東北地区支部学術交流会が、6月13日(土)に吉林省延辺朝鮮族自治州の長白山ヒルトン恵庭ホテルにおいて開催され、遼寧省、吉林省、黒龍江省在住の笹川医学奨学金制度研究者OB等 60名が参加しました。
 学術交流会は、許順副理事長(第15期生)の司会のもと、「ライフステージに応じた健康管理」をテーマに、5名の同学会会員が講演を行いました。

■講演
李顕筑 黒竜江省中西医結合研究所教授(第8期生)
   「慢性疾患管理の強化 ―寒冷地における健康課題への取り組み―」
 黒竜江省の脳卒中発症率が全国第1位であることを紹介し、寒冷地では、寒冷な気候による血管攣縮、身体活動量の低下、高カロリーな食生活などの要因により、心脳血管疾患、がん、糖尿病、代謝異常などを発症しやすいと指摘しました。また、寒冷地では「五高」(高血糖、高血圧、高脂血症、高血液粘度、高尿酸血症)が併存する複雑な病態を呈することが多く、総合的な介入が必要であると説明しました。
慢性疾患の予防・管理体制については、黒竜江省が省・市・県の3段階からなる慢性疾患予防・管理ネットワークを構築し、「予防・スクリーニング・調整・治療・管理・健康増進」を一体化した管理モデルを推進していることを紹介し、特に二級病院を重点として取り組んでいると述べました。
 さらに、冬季の屋外活動が制限されることへの対応として、屋内で行う血糖・脂質コントロール体操を開発し、18分間で1万歩の歩行に相当する効果を目指しているほか、グラフェンを用いた遠赤外線照射により督脈のツボを刺激し、代謝を促進する方法についても検証を進めていることを紹介しました。

胡秀英 四川大学華西医学院教授(第18期生)
   「中年期から老化リズムを整える―健やかな加齢を支える生活習慣の知恵―」
 学術誌『Cell』に掲載された最新の研究をもとに、ゲノムの不安定性、テロメアの短縮、細胞老化、慢性炎症など、14の「老化の特徴(Hallmarks of Aging)」について、その分子メカニズムを解説しました。また、WHOのデータを引用し、健康に及ぼす影響は生活習慣が60%、遺伝的要因が15%であると説明し、生活習慣への介入によって老化の進行を効果的に遅らせることができると述べました。
 さらに、34歳頃からコラーゲン量が減少し、44歳頃から身体機能が低下することを踏まえ、中年期から抗炎症を意識した食生活、筋力トレーニングによる筋肉量の維持・増加・ストレス管理などに取り組むことを推奨しました。
 最後に、「お金を貯めるより筋肉を貯める」という考え方を紹介し、80歳以上の高齢者については、急激な体重減少を避け、単に体重を減らすのではなく、栄養を十分に補いながら筋肉量を増やすことが重要であるとし、高齢者の増筋・減量戦略を提案しました。

馬迎華 北京大学児童青少年衛生研究所教授(第23期生)
   「「健康第一」の理念を貫く―ライフコースの視点から考える学校における健康づくりの意義―」
 「健康第一」の教育理念を実践するための取り組みと、医療と教育の連携について講演しました。政策・法制度の面では、教育部(日本の文部科学省に相当)が2026年の政府活動報告に初めて「健康学校の建設を全面的に推進する」方針を盛り込み、生徒の心身の健康を学校教育の中核に位置づけたことを紹介しました。カリキュラム・教材の改革については、新たに編纂された義務教育段階(1~9年生)の体育・健康教材において、健康教育に関する内容が81コマ中63コマを占め、心理社会的能力など13の中核的な資質・能力を取り上げていると説明しました。また、医療機関の役割については、病院が学校にとって専門的な支援機関として、学校医の研修、高リスク生徒のフォローアップ、健康データの分析などを支援し、家庭・学校・地域・医療機関が連携する体制を構築する必要があると指摘しました。
 さらに、「健康学校」の建設・運営の質を確保するため、投入から成果までを対象とする5次元の評価システムを構築し、継続的に改善していくことが重要であると説明し、最終的には、2035年までに全国のすべての学校を質の高い「健康学校」とすることを目指していると述べました。

李 娜 吉林大学白求恩第一医院産科教授(第25期生)
   「胎児臍帯動脈血栓症の2例について」
 胎児臍動脈閉塞について、診断・鑑別、治療方針の決定および周産期管理の観点から解説しました。
 病態生理学的には、先天性の単一臍帯動脈と、後天的に生じる臍動脈閉塞を区別する必要があり、後者は通常、臍帯の捻転や血栓形成によって引き起こされ、死亡率が非常に高いと説明しました。モニタリングと早期警戒の指標としては、胎児心拍モニタリング(NST)と母体・胎児の血行動態モニタリングを組み合わせ、中大脳動脈の脈動指数(MCA-PI)や静脈管a波の逆流など、胎児の代償反応を示す所見に注目することが重要であると指摘しました。
 妊娠後期に持続的なII型胎児心拍モニタリング波形と血流異常が認められた場合、胎児肺成熟を促す処置を行ったうえで、胎児死亡のリスクを低減するため、速やかに帝王切開によって妊娠を終了する必要があると説明しました。また、抗凝固療法については、凝固亢進状態にある妊婦に対して低分子ヘパリンを予防的に使用する一方、羊水穿刺などの侵襲的処置を行う前後には、出血リスクを考慮して投薬計画を調整する必要があると述べました。

林連捷 中国医科大学盛京医院消化科教授(第28期生)
   「最新の脂肪性肝疾患診療ガイドラインから考える体重管理の重要性」
 初めに、脂肪肝について疾患概念の変遷と疫学の観点から解説しました。従来の「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」が「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MAFLD/MASLD)へと名称・概念が見直されたことを紹介し、発症における代謝因子の重要性を強調するとともに、患者へのスティグマをなくし、より精密な治療につなげることの重要性を訴えました。
 現在、中国の成人における脂肪肝の有病率は約30%、すなわち約3人に1人が脂肪肝を有するとされ、2030年以降には肝がんの主要な原因になることが予測されていることを紹介しました。
 続いて、ライフサイクル全体を見据えたリスク評価と管理について説明しました。MASLD患者では、2型糖尿病の発症リスクが2.2倍、心血管疾患のリスクが1.5倍に高まり、死亡原因では心・脳血管イベントが第1位であると指摘しました。
 治療については、第一選択としてカロリー制限食と運動を中心とした生活習慣への介入を挙げました。第二選択として、減量および肝臓の保護を目的に、GLP-1受容体作動薬の使用を推奨し、重度の肥満患者については減量手術も選択肢となると説明しました。

 

 今回の学術交流会では、「全ライフサイクルにわたる健康管理」をテーマに、慢性疾患の予防・管理、加齢に伴う健康課題、学校における健康づくり、周産期医療、さらには生活習慣病としての脂肪肝まで、幅広い分野から最新の知見が共有されました。各講演を通じて、健康管理は特定の年代や疾病だけを対象とするものではなく、子どもから高齢者まで、生涯を通じて継続的に取り組むことが重要であることが改めて示されました。また、疾病の治療にとどまらず、早期発見・予防、生活習慣の改善、適切な健康教育、医療・教育・家庭・地域の連携など、多面的な取り組みの必要性についても認識を深める機会となりました。

 今回の交流会が、参加者にとって健康に関する最新の知識を学ぶだけでなく、それぞれの専門分野を越えて知見を共有し、今後の研究や実践につなげる貴重な機会となることを願います。