笹川同学会西南地区支部学術交流会が開催されました
2026/10/29

笹川医学奨学金進修生同学会(笹川同学会)の西南地区支部学術交流会が、2026年8月29日(土)に雲南省昆明市の雲安国際会議センターにおいて開催され、重慶市、四川省、雲南省、貴州省在住の笹川医学奨学金制度研究者OB等 60名が参加しました。
学術交流会は、李松常務理事(第8期生)の司会のもと、「環境衛生と健康管理」をテーマに、6名の同学会会員が講演を行いました。
■講演
欒栄生 四川大学華西公共衛生学院教授(第2期生)
「今世紀における3つの重大な感染症流行の分析と考察」
今世紀に発生した3つの重大な感染症流行――2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年のA型H1N1インフルエンザ、2020年のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、いずれも動物由来の病原体が種の壁を越えて伝播したことに起因しており、人間と自然との境界がますます脆弱になっていることを示していると述べました。また、これらの3度の感染症流行は、世界の公衆衛生体制における課題を浮き彫りにするとともに、監視・早期警戒体制の整備、ワクチン開発、国際協力の加速を促したと指摘しました。
さらに、今後の新たなパンデミックに対応するためには、人・動物・環境の健康を一体的に捉える「ワンヘルス(One Health)」の理念を堅持し、早期警戒、情報の透明性、そして国際的な連携・協調を強化することが不可欠であり、それによってこそ人々の健康を守る強固な防衛戦を築くことができると強調しました。

冉玉平 四川大学華西医院皮膚科教授(第4期生)
「すべては「かわいいペット」が招いた災い?-ペットが引き起こす感染症」
ウサギ、犬、猫、ハムスター、ハリネズミ、オウムなどの身近なペットとの触れ合いは、白癬菌やイヌ小胞子菌などの皮膚糸状菌に感染する可能性があり、まぶたの感染症、ケルスス禿瘡、頭部白癬、体部白癬、さらには症状の判別が難しい白癬などを引き起こすことがあり、特に、乳幼児は感染しやすいため、日頃から注意が必要であると説明しました。
また、ペットとの触れ合いを楽しむ際には衛生面に十分注意し、皮膚に異常が見られた場合には速やかに医療機関を受診するよう呼びかけ、「大切なペットとの暮らしを楽しむためにも、感染症予防を心がけましょう」と注意を促しました。

陳 明 重慶医科大学第一附属医院心内科教授(第22期生)
「環境衛生における新たな危険因子とASCVD」
ASCVD(動脈硬化性心血管疾患)の従来の危険因子に加え、環境への曝露が、これまで過小評価されてきた発症要因として認識されつつあると指摘しました。大気汚染、交通騒音、夜間の光害、化学物質やプラスチックによる汚染などは、世界の心血管疾患による死亡の約20%に関与しており、その発症メカニズムには、酸化ストレス、炎症、交感神経系の活性化などが関係していると説明しました。
さらに、臨床と政策の両面において、環境曝露の総体である「エクスポソーム(Exposome)」に着目する必要があると強調しました。心血管疾患の一次予防策として、夜間の光曝露の低減、騒音対策、大気環境の改善などを取り入れることが重要であると述べました。
加えて、不安、抑うつ、慢性的なストレスも、ASCVDの重要な独立危険因子として認識されていると指摘しました。心血管リスクの評価に心理面のスクリーニングを取り入れ、リスクの高い患者を早期に発見して介入することで、心身の両面から一体的に管理していくことが重要であると強調しました。

馬艶玲 雲南省疾病予防コントロールセンター教授(第26期生)
「雲南省におけるHIV感染者の発見率向上に向けた取り組み」
雲南省では、すべての郷・鎮を網羅する9,658か所の検査室を基盤として、医療・保健機関が主体的に検査サービスを提供するとともに、HIV検査を健康診断や基本的な公衆衛生サービスに組み込んでいると説明しました。
また、ビッグデータプラットフォームを活用し、これまで検査を受けたことのない人々に検査を呼びかけるとともに、感染者の接触者の追跡調査や分子ネットワークモニタリングにも取り組み、新たに報告されたHIV感染者全員を対象に感染経路などの追跡調査を実施していると紹介しました。
これらの取り組みにより、従来の「広範なスクリーニング」から「対象を絞った的確な感染者の発見」へと転換し、HIV感染者の発見効率の向上を図っていると述べました。

楊 勇 貴州省人民医院准教授(第44期生)
「仮想定置システムによる誘導と頭蓋内圧モニタリングの併用:高血圧性脳出血に対する神経内視鏡手術への応用」
仮想定位システム技術により、高血圧性脳出血(HICH)に対する神経内視鏡手術において、「精密化」と「個別化」を実現でき、手術の安全性向上や患者の予後改善につながると述べました。
また、今後は人工知能(AI)技術の活用にして、仮想定位モデルの構築を迅速化するとともに、より低侵襲な頭蓋内圧(ICP)モニタリング用プローブを開発することで、手術による患者の身体的負担をさらに軽減できると、展望を述べました。

張 慧 昆明医科大学第一附属医院教授(第25期生)
「ドライアイ診療における多職種・多診療科連携(MDT)モデルの活用」
多診療科連携モデルの導入により、特に全身疾患を合併する患者のドライアイの診療プロセスが大幅に改善されたと報告しました。診療科間の垣根を取り払い、一か所での包括的な評価と個々の患者に応じた治療を実現するとともに、眼科とリウマチ・免疫科、内分泌科、心理関連の診療科などとの連携・交流を強化することで、診療の効率と質が向上したと述べました。
さらに、包括的な学術交流と患者教育のためのプラットフォームを構築し、ドライアイ診療の標準化と体系化を推進していると紹介しました。

今回の学術交流会では、公衆衛生、皮膚感染症、心血管疾患、HIV予防・対策、脳神経外科、眼科といった幅広い分野の講演が行われました。各講演は、先進性と実用性を兼ね備えており、中国西南地域の笹川同学会会員の学術的な活躍を示すとともに、分野を超えた交流と協力の促進につながりました。